網膜硝子体手術とは
硝子体とは眼内の水晶体の奥にある透明なゼリー状の組織です。目の内壁を構成する網膜(薄い膜状の神経組織です)と隣合わせになっています。硝子体手術では、白目(結膜)に小さな穴を3−4箇所あけ、そこから特殊な細い器具を挿入して、硝子体とともに生じている濁りや出血を取り除きます。
さらに、網膜に加わる異常な牽引の除去、網膜にできた異常な膜の除去、剥がれた網膜を元に戻すなどを状態に応じて行い、網膜の機能の維持・回復をはかります。
当院で行う
日帰り硝子体手術
硝子体手術は、眼科手術の中でも白内障手術などよりも専門性が高い手術です。院長は岡山大学や、その基幹関連病院の部長として豊富な硝子体手術の経験があります。安心してご相談ください。
硝子体手術に適応する
疾患の種類
黄斑前膜
黄斑上膜は、黄斑部と呼ばれる網膜の中心部分に線維性の膜が生じる状態をいいます。膜の収縮にともなって黄斑部が引っ張られることで、物がゆがんで見えたり、物が大きく見えたり、視力が低下したりします。症状の程度に応じて、膜を切除する手術が必要になります。
黄斑円孔
黄斑円孔は、黄斑部と呼ばれる網膜の中心部分に穴が生じている状態をいいます。硝子体という網膜に隣接するゼリー状の組織によって、黄斑部が引っ張られることが原因でおこります。物が歪んで見えたり、視力が低下したりします。気づかずに時間が経つと、治りづらくなり後遺症も残りやすいため、早期の手術治療が必要です。硝子体手術によって円孔を閉鎖させる必要があります。
裂孔源性網膜剥離
網膜とは薄い膜状の神経組織で、眼球内の内壁に接着する状態で存在しています。網膜剥離は網膜が内壁から剥がれてしまう状態を言います。網膜と、その隣にある硝子体というゼリーには所々で強いくっつき(癒着)が生じています。そこに、老化による硝子体の収縮が加わると、網膜が収縮した硝子体に引っ張られて裂けてしまいます。裂け目から液状の硝子体が入り込むことで裂孔源性網膜剥離が起きます。次第に視野が狭くなり、視力が低下し、放置すると失明してしまうため、はやめの硝子体手術が必要です。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、糖尿病の3大合併症の1つです。網膜とは、眼底にある薄い膜状の神経組織ですが、糖尿病網膜症は糖尿病によって網膜の血流が障害されることが原因でおこります。初期は自覚症状に乏しいですが、進行すると網膜の異常血管から硝子体出血がおこり視力低下などの症状が現れます。また、異常血管だけでなく増殖性の膜が生じて網膜を引っ張って障害する状態を増殖性糖尿病網膜症といいます。重症な場合は硝子体手術によって硝子体出血や増殖性の膜を切除する必要があります。
硝子体出血
硝子体に出血が及ぶと高度な視力障害が生じる場合があります。 出血の原因としては糖尿病網膜症、網膜剥離、網膜静脈閉塞症、網膜細動脈瘤破裂、などがあります。軽度の出血の場合は、経過観察しながら血液の吸収を待つこともありますが、出血量の多い場合は硝子体手術を行います。
増殖性硝子体網膜症
網膜剥離や糖尿病網膜症の放置、網膜剥離の術後再発などによって起こる病気です。重症で非常に難治性の病気で、治療をおこなっても後遺症がのこるケースがほとんどです。失明の回避のために硝子体手術を行う必要があります。
黄斑下血腫
加齢黄斑変性や、網膜細動脈瘤などが原因で、黄斑部の裏側に血腫(血のかたまり)が貯留することがあります。まれですが、重症な黄斑疾患です。血腫が「かさぶた」のように硬く固まってしまう前に、黄斑部の外に移動させる手術(黄斑下手術)が必要です。
近年、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)という血腫をやわらかくする薬剤を併用した黄斑下手術が新たに開発されました。図は2020年3月〜2023年3月に姫路赤十字病院で行なわれたtPA併用の黄斑下手術8症例(すべて院長執刀の症例です)の成績を眼科医会で発表したデータです。術前は血腫によって高値になっていた黄斑の厚みが、術後は血腫が減少して厚みが減少しています。
水晶体脱臼・
眼内レンズ脱臼
通常、水晶体や眼内レンズは眼内で固定されて動かない状態です。固定が緩んで位置がずれてしまうことを脱臼といいます。原因は様々ですが、過去に目をぶつけた方、一部の緑内障の方、非常に高齢な方などに多いです。レンズがない状態と同じですので、焦点があわずにぼやけて見えます。硝子体手術によって脱臼した水晶体やレンズを取り除き、新しい眼内レンズを挿入・固定します。
網膜硝子体手術の
術後について
術後の見え方
硝子体手術は、手術をした直後から、すぐに見え方が改善するわけではありません。
黄斑前膜、黄斑円孔などの黄斑部の症状の場合は、見え方は数ヶ月かけてゆっくり改善していきます。もともと生じている歪みなどはすべてなくなるわけではなく、部分的に残ります。また、黄斑円孔や網膜剥離などの治療用のガスやオイルの注入を要する疾患では、ガスやオイルがなくなるまでの術後1−2ヶ月程度は見えづらい状態が続きます。
術後の注意点
患者様には術後の過ごし方に注意していただく必要があります。入浴や運動や車の運転など、日常生活に注意が必要になります。また、ガスやオイルの注入が行われた場合は、数日間、手術の効果を高めるためにうつ伏せや横向きなどの体の向きを一定にして安静にしてもらう必要があります。手術後の注意点はスタッフから説明させていただきます。
当日~翌日
- 術後は傷口が開きやすい状態なので、帰宅後もできる限り安静にし、目を擦ったり、触ったりしないようご注意ください。
- 車の運転も避けましょう。
- 病状によっては帰宅後も姿勢の制限や保護眼鏡の装用が必要になる場合があります。
- 当日は入浴を避けてください。翌日から首から下のシャワーは可能ですが、顔を濡らさないように注意をしましょう。
~術後1週間
- 術後3日間は洗髪・洗顔ができません。顔はタオルで優しく拭くようにしてください。
- 簡単な家事や事務作業は可能です。病状によっては姿勢の制限が1週間程度必要な場合があります。
- 治療用のガスやオイルの注入を要する疾患では、ガスやオイルがなくなるまでの術後1−2ヶ月までは見えづらい状態が続きます。
- 通院や外出の際は運転を避け、必要な場合は運転が可能か医師にご相談ください。
~術後2週間
- 仕事や家事も平常通りできるようになります。しかし、身体への負担や怪我のリスクがある作業は控えましょう。
- 点眼薬は使用を続けてください。
- 1週間後からは、洗髪や洗顔も可能になりますが、目を擦ったり、押したりしないようご注意ください。
- 目のまわりのメイクや、まつげエクステ、カラーコンタクトの着用などは、医師の許可が出てからにしましょう。
- 軽い運動は2週間目から、激しいスポーツも1ヶ月以降から可能になりますが、傷の経過によって異なるため、医師の指示に従ってください。
- 治療用のガスやオイルの注入を要する疾患では、ガスやオイルがなくなるまでの術後1−2ヶ月までは見えづらい状態が続きます。
費用
硝子体手術
1割 | 3割 | |
---|---|---|
硝子体手術 (網膜付着組織を含むもの) |
約39,000円 | 約117,000円 |
硝子体手術 (その他のもの) | 約30,000円 | 約90,000円 |